胸のしこりや痛みに気付いたとき、皆さんがいちばん心配されるのは「もしかすると乳がんなのではないか」ということではないでしょうか。乳がん以外にも乳腺の疾患はいろいろあります。ここでは代表的な乳腺疾患についてご紹介します。

乳房の中には、乳汁をつくり、 分泌するための乳腺組織があります。乳腺組織は乳汁を作る小葉と、作られた乳汁を乳頭まで運ぶ乳管からできています。乳がんは、この乳腺「乳管や小葉」の細胞ががん化し、異常に増殖することによってできる悪性腫瘍です。乳がんの90%は、乳管の細胞からできる「乳管がん」です。

小葉から発生する乳がんも10%あり、「小葉がん」と呼ばれます。がん細胞が乳管の中に留まっていて、乳管外に出ていないものを非浸潤がんと呼びます。がんが増殖し、乳管を食い破って外に広がったものは浸潤がんと呼びます。乳管から外に広がったがんは、がん細胞のかたまり「腫瘍」をつくります。これがしこりとして触れる部分です。乳管から外に出てきたがんは、血管やリンパ管にはいって全身に転移する可能性を秘めています。
乳がんの発見につながる症状としてよく知られているものは「胸のしこり」ですが、そのほかにもさまざまな症状があります。「おかしいな」と思ったら医師に相談しましょう。乳がんが小さいうちはこれらの症状が見られないこともあります。特に気になる症状がなくても定期的な乳がん検診をおすすめします。
人間のからだは細胞でできていて、常に新陳代謝を繰り返しています。細胞分裂によって新しい細胞が作られ、古い細胞や異常な細胞が処分されて、正常な身体の構造が保たれています。この新陳代謝のしくみは複雑で繊細なので、ときどき制御のしくみが壊れてしまうことがあります。
細胞分裂が止まらなくなったり、細胞が不死化したりすると、細胞が異常に増殖を続けて腫瘍をつくります。腫瘍には大きくなるだけで正常組織を破壊しない良性腫瘍と周りの正常組織まで入り込んで壊したり、他の臓器に転移したりする能力を持った悪性腫瘍があります。
がんはこの悪性腫瘍の一種です。知っておいていただきたいことは、がんは新陳代謝の制御のしくみがほんの少し異常を起こすだけで起こるものであり、誰でもガンになりうるということです。がんのリスクを高める要因はいろいろありますが長く生きてきて、細胞分裂がくりかえされるほどにがんが発生する可能性は高まります。
さて、このことは、乳がんの罹患率が30、50歳頃に高いことと大きな関係があります。乳がんは乳腺の細胞が異常増殖したものですので、乳管の増殖にかかわるエストロゲンという女性ホルモンと大きな関係があります。体内のエストロゲンレベルが高いことが乳がんのリスクを高めますので、女性ホルモンにさらされる期間が長くなると、乳がんの発生リスクが高まります。このため、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がないといったことが、乳がんのリスク要因とされています。また、経口避妊薬の使用や閉経後のホルモン補充療法によっても乳がんのリスクが高まる可能性があります。